神戸のマジシャン一喜耀太のサイト

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スペシャリスト?ジェネラリスト?

(このページはコラムに書いた内容より転載しています)

マジシャンという肩書について書きます

私の肩書きはカーディシャンであるのは自己紹介で書いてる通りです
カーディシャンはマジシャンの中のワンジャンルです
カーディシャンでありながらクロースアップマジシャンでもあるわけです
マジシャンを医者、クロースアップマジシャンを外科医、カーディシャンを心臓外科医
マジシャンを動物、クロースアップマジシャンを哺乳類、カーディシャンを牛
そんなイメージでとらえてもらえれば良いでしょう

たまに「ハト出して」と言われますがそれはステージマジシャンのやることです
あ、別に言ってもらう分には全然構わないんです
クロースアップマジシャンとステージマジシャンの違いが分からないのが普通で
そのために今書いてるわけですから

ステージマジシャンとクロースアップマジシャンのやることは根本的に違うのです
それなのにマジシャンなんだからステージもクロースアップもできると良く勘違いされます

じゃあスケート選手と聞いてどう思うでしょうか?
スピードスケートもフィギュアスケートもどちらもできると思うでしょうか?
スキー選手と聞いてジャンプ競技からモーグルからスノーボードまで全部できるでしょうか?
フィギュアスケーターはフィギュアだけ
スピードスケーターはスピードだけ練習するのが普通
ではないですか?
だったらマジシャンがステージからクロースアップまで練習するのはオカシイとは思わないですか?

特殊な場合を除いて
ステージマジシャンの多くはクロースアップマジックの仕事をしていたりしますが
クロースアップマジシャンの多くはステージマジックの仕事をしない
です
かく言う私もその一人です
これは仕事上クロースアップの方が気軽に依頼が舞い込んでくるので
ステージマジシャンが片手間のバイト感覚でクロースアップに手を出してるだけです

先述の通りステージマジシャンの多くはクロースアップができるけど
クロースアップマジシャンの多くはステージマジックをやらないです
こう聞くと
ステージマジシャンはクロースアップマジシャンから見て上位職だ
と勘違いされそうだけど
完全なる誤り
です

ではそう勘違いする人にこう質問しましょう
「あなたは歌を歌う事が出来ますか?」
そりゃ歌えますよね?カラオケの一回くらい行ったことあるでしょう
それじゃあCD出して売れますか?
コンサートを開いて客を呼んでそれを職業にできますか?
まず無理ですよね?
なぜできるのに仕事にできないのでしょうか?
できる事が必ずしも仕事として成立するわけじゃない
そんなこと誰もが分かってることでしょう

仕事として行うにはそれなりのノウハウを修得しないといけないのです
日本語を喋れるだけで日本語(国語の)教師になれないのも
絵が描けるというだけで画家になれないのもそういう理由だからです

英語教師は日本語と英語の両方喋れるから
日本語しか喋れない国語教師から見て上位職にあたるのでしょうか?

要するにステージマジシャンのクロースアップマジックも同じ事です
できるというただそれだけです
人間が歌を歌えるというのと何の変わりもありません

つまりステージマジックの練習を疎かにしてクロースアップの練習をしてる半端者
片手間のクロースアップを恥ずかしげもなく見せてる鉄面皮のどちらかでしかないのです

私を含むクロースアップマジシャンの多くがステージマジックの仕事をしないと書きました
これはただ単にできないからではありません
お金を頂戴してまでお見せするレベルでできないというだけの話です
ステージマジックでブイブイ仕事をしていたマジシャンがクロースアップの仕事をする現場を見ることもありますが
クロースアップマジシャンからすれば

よくそのクロースアップでお金を貰おうと思えたね
としか言えない人間ばかりです
その殆どが「ステージからクロースアップまで幅広くやります」と言う中途半端マジシャンで占められてます

結局はスペシャリストかジェネラリストかという部分に集約します
競泳日本代表でメドレーリレーの平泳ぎを宮下に泳がせて背泳ぎを北島に泳がすなんてバカはしないでしょう?
眼科/耳鼻科/消化器科/心臓外科/脳外科/呼吸器科/肛門科/産婦人科何でもござれの医者
心臓一筋で仕事してきて心臓以外の事は全く分からんけど心臓の事なら任せとけって医者が居た場合
貴方が心臓手術してもらうことになったらどちらにしてもらいたいですか?

ステージマジシャンの片手間のクロースアップマジックをお金を払ってまで見るなんて馬鹿げてるにも程があります

中途半端な姿勢でマジックに向き合っているマジシャンを見ると反吐が出ます
生まれついての器用さでクロースアップも器用にこなしてる風のステージマジシャンも多くいます

結果的に上手いか下手かよりも自分のやっている仕事にどこまでプライドを持って
真摯に己を邁進させているか
が大事なんじゃないのかなぁ?と思ってます

便所に落とした伊勢海老ときれいなブラックタイガーだとどっちがいいですか?
鼻ほじった手で握った大トロのニギリとちゃんと洗った手で作った稲荷寿司だとどっちがいいですか?
結果的に美味けりゃそれで良いでしょってのはちょっと違うと思います

自分の中で完璧に昇華して今の自分が誇りを持って見せられる物を提供するのがプロです

出演を依頼するクライアント様もその辺が分かってなくて
ステージもクロースアップも何でもやりまっせという中途半端なマジシャンに依頼しがちです
一個しかできないより二個できるという欺瞞のお得感に惹かれて
何でもできますと主張するマジシャンを依頼する傾向にあるようです

そのマジシャンがステージマジックとクロースアップマジックのどちらをやっていて
自分の依頼にはどちらが必要なのかと照らし合わせて依頼を申し込むべき
だと思います

本物のクロースアップマジックを提供できるのはクロースアップマジシャンだけだと思ってます
ステージマジシャンとクロースアップマジシャンの違いが分からなくても良いですが
上位職や下位職だと誤解するのだけは避けて欲しいと思う今日この頃です

お時間に余裕がございましたら続きもございますのでお読み頂ければと思います